『猫に木天蓼(ねこにまたたび)』、誰もが知っている言葉ですね。その言葉の意味は、「非常に好きなもののたとえ。また、それを与えれば効果が著しいことのたとえ。」となっています。では、実際に猫にまたたびを与えるとどうなるか、あなたは、ご存知ですか?
我が家の4匹の猫達も、表現方法や度合いは違えど、全ての猫がまたたびを前にすると、とてもおかしな行動をしてしまいます。見ているこちらが、引いてしまう位の反応を見せてしまうのが『またたび』です。
何故、猫がそれほどまでに、『またたび』に夢中になるのか、また、どれほどの魅力を持っているのか考えてみました。
どうして猫はまたたびが好き?
聞いて納得のその理由とは
ネコ科動物の性フェロモンに近い物質!?
『またたび』に含まれる「ネペタラクトーン」という物質が、ネコ科動物の性フェロモンに近いものだと言われています。つまり、性的に興奮させる媚薬的な物だと言えるのです。
ですから、性的に未熟である子猫や妊娠中の猫の場合には、『またたび』の匂いを嗅いでもあまり効果が見られない様です。大人の猫達がする様な喉を鳴らしたり、目を細めたり、よだれを流して眠るなどのメロメロ状態にはなりません。
この場合、『またたび』は中枢神経に麻痺を起こすのです。この作用の継続時間は、だいたい20~30分と言われます。
この「ネペタラクトーン」という物質は、『またたび』の他にもキウイやイヌハッカなどにも含まれています。また、トラ、ヒョウ、ライオンなど他の猫科の動物にも同様の効果があると言われます。
ヤコブソン器官が『またたび』の匂いに反応する
猫には、口蓋(こうがい)の奥に「ヤコブソン器官」または、「鋤鼻器官」(じょびきかん)と呼ばれる特殊な器官を持っているのです。これは、人間は退化してしまっていますが、主としてフェロモン物質の様な極めて微量な分子成分を感知するという働きを持つ物で、猫の場合には、『またたび』の匂いを嗅いだり食べたりする事で、この器官が働くのです。
その結果、リラックスした状態となり、床や地面を転げ回ったり、色々な場所に身体をこすり付けたり、気持ち良さそうにゴロゴロと喉を鳴らしたりします。
アルコールと『またたび』は、似て否なる物
『またたび』による反応には個体差がありますが、人間で例えると酒に酔った感じに似ている事から「酔っ払う」と表現される事がありますが、アルコールとは全く違います。
何故なら、少量の酒は「百薬の長」とさえ言われていますが、『またたび』は健康に導くという意味はありません。
アルコールと同じく個体差はありますが、「性的な興奮」に対しての効果があるという点で子猫や妊娠中のメスには効果が薄いのです。
『またたび』は、猫の麻薬!?
『またたび』は、猫の「麻薬」と表現されることも多々ありますが、体への害も中毒性もないという事から「麻薬」という言葉は、必ずしも適切であるとは言えないでしょう。
ですから、ペットの猫へのご褒美やコミュニケーションツールとして活用するのには、何の問題もありません。
しかし、中枢神経への麻痺を起こすという事は脳関係に少なからず影響があるという事ですから、注意も必要です。その麻痺が重度になると、呼吸が出来なくなるという心配もあるからです。
その様な『またたび』の過剰摂取に対するマイナス面としては、「まったく問題ない」「呼吸困難や昏睡状態になる場合がある」等様々な事が言われていますが、現在の所、真偽のほどは確認できていないとの事です。
故に、『またたび』の管理はしっかりしておきましょう。一般に販売されている『またたび』製品は、一袋0.5g程度なので、問題はないと思われますが、うっかり、1g以上あげたりしないように気をつけましょう。
ある実験結果では、『またたび』を与えた猫の内、20%が「泥酔状態」になり、60%が「適度にうれしそう」だったという事で、実に8割の猫が『またたび』に喜ぶという結果が報告されている様です。
因みに様々な『またたび』製品がありますが、『またたび』の効果の強さは、粉末→液体→実→枝→葉の順と言われています。
『またたび』の有効成分は、「マタタビラクトン」と「アクチニジン」
猫に『またたび』を与えると、「マタタビ踊り」など、いわゆる「マタタビ反応」を示すのは、何故でしょう。
『またたび』の有効成分は、「マタタビラクトン」と「アクチニジン」です。しかし、この「マタタビラクトン」と「アクチニジン」は、人間が嗅いでも決して魅力的な香りがする訳ではありません。
「マタタビラクトン」という物質は、実は「イリドミルメシン」という物質(アルゼンチンアリの分泌物中から発見)と同一のものだそうです。
結局、「マタタビラクトン」は単一の物質ではなく、「イソイリドミルメシン」や「ネペタラクトン」などの物質も含んだ「マタタビラクトン類」という物質群だという事もわかった様です。
なお、その「ネペタラクトン」は「キャットニップ」(イヌハッカ)という『またたび』に似た軽い酩酊反応を猫にもたらす植物(ハーブ)に含まれる主要作用物質です。
一方、「アクチニジン」は揮発性の臭気で、猫に対し特殊な生理作用(マタタビ作用)が特徴的な物質です。
これらの物質が、何故、猫やネコ科動物だけに作用するかについては、まだ不明確な部分もある様です。そして、すべての猫が『またたび』に対して反応する訳ではなく、『またたび』非感受性の個体も少なからず存在するのです。
様々な『またたび』効果を猫に利用
マタタビ踊りをする。highになる。攻撃的になる。お酒に酔っぱらったようになる。恍惚状態になる。身体をすりすりする。ケリケリする。うっとりする。フレーメン現象(口を半開きにして、恍惚のような表情になる)。リラックスした状態になる。床や地面を転げ回る。ゴロゴロと喉を鳴らす。目を細める。よだれを流す。甘える。 愛想が良くなる。興奮する。食欲がアップする。など様々です。
また、全く何の変化も見られない事もあるので、一概に言えないというのが、実際の所です。
『またたび』は漢方薬
この『またたび』の実について調べてみました。『またたびの実』は、マタタビアブラムシに寄生され変形した物は、木天蓼(もくてんりょう)という生薬として、人間社会でも用いられています。
冷え性、神経痛、腰痛、リューマチなどに効果があると言われています。 また、この実を使い、またたび酒を漬けたり、粉末にしてお茶にしたりして、滋養強壮に飲むこともあるようです。ですから、『またたび』は、ペットショップや漢方薬局で入手出来るのです。
因みに、フルーツとして一般的であるキウイも、この『またたび』に準じた作用がある事は、あまり知られていないかも知れません。
起源を紐解くと、中国から台湾にかけて分布するシナマタタビが20世紀初めにニュージーランドに渡り改良されたものが、現在のキウイになったといわれているからです。
欧米ではシソ科のキャットニップがこれに類似すると言われていますが、こちらは明らかな酩酊する効果までには至らず、ハーブとしての効果を楽しんでいるようです。
つまり猫に『またたび』と言えば、日本特有の文化である事がわかりました。また、猫のストレス解消、食欲減退時に使用されますが、猫にとって必ずしも効果がある物という訳ではないという事です。
いかがですか。『またたび』効果でダンスを踊る、愛想が良くなる、身体をすりすりする、転げ回る、甘える、気持ち良さそうにする、じゃれる、興奮する、フードの食いつきがアップする・・・等々、猫ちゃんによって様々な変化を見ることができます。
結論的には、『またたび』の持つ成分が、猫やネコ科の動物にとってのみ作用する物質である事。そして、それは性的興奮を誘う効果のある物であり、それが、脳の中枢部を刺激し、運動神経などを一時的に麻痺させる、又は、陶酔させてしまうという事なのです。
しかし、実の所、その様な猫たちが多いのは間違いはないのですが、科学的な根拠という部分では、明らかになってない事も多いようです。
まとめ
どうして猫はまたたびが好き?聞いて納得のその理由とは
・ネコ科動物の性フェロモンに近い物質!?
・ヤコブソン器官が『またたび』の匂いに反応する
・アルコールと『またたび』は、似て否なる物
・『マタタビ』は、猫の麻薬!?
・『またたび』の有効成分は、「マタタビラクトン」と「アクチニジン」
・様々な『またたび』効果を猫に利用
・『またたび』は漢方薬