メダカは本来、繁殖力が旺盛な魚と言われています。ですから、長くメダカを飼っている人達からの経験談の中には「増やした」のではなく「増えてしまった」なんて表現される事もあるのではないでしょうか。
しかし、それはメダカを繁殖目的で育てる訳ではなく、意識せずに飼育していた結果、偶然の産物とも言える事で、『気付いたら』という事でもあるのでしょうが、もし、繁殖を目的として、狙って増やそうとした時、多くの場合、その難しさを実感することになるというのが現実なのです。
成長したメダカも、勿論、可愛いのですが、卵から孵化したての、肉眼でも確認するのが難しい位の小さなメダカの赤ちゃんを最初に発見した時の気持ちを味わってしまうと、きっとメダカの魅力に取りつかれる事間違いなしです。
とは言え、繁殖という物は大変難しく何度試してみても上手くいかないという声も多く耳にします。では、何がいけないのでしょうか?
メダカの繁殖が上手くいかない理由、そこには、実は、飼い主さんが気付いていなかった盲点があるのです。では、それらについてお話ししましょう。
メダカの繁殖が上手くいかない人の7つの盲点
繁殖シーズン前に、オスとメスのバランスを考えた数を確保しましたか
メダカを屋外で飼育するのであれば、気温20℃位になれば卵を生める環境だと言われています。つまり、一般的には、西日本、東日本の沿岸部であれば、早いと3月下旬や4月上旬あたりから出産シーズンになる訳です。
しかし、シーズンに突入したからと言って何の問題も無く、スムーズに繁殖出来るとは限りません。生み初めの時期には、メスの『過抱卵病』に十分な注意が必要です。
この『過抱卵病』とは、メス自身は繁殖の準備が出来ているというのに、肝心なパートナーとして適切なオスがいない場合に起こる現象です。結果、メスは卵を体外に出すことが出来ず、お腹が膨れて死んでしまうのです。
この様な事が起こらない為に、冬の終わりから春にかけての水槽内のメンバーの観察が肝心です。相性の良いパートナーを見つけ、カップルが成立するためには、メスがオスを選ぶ事が出来る数のバランスが必要だと言えるでしょう。つまり、メス一尾に対してオス一尾では不安があるという訳です
そして、それには、タイムリミットもあるのです。繁殖準備が整ったメスは、良きパートナーとなるオスが見つからない状態でも10日もすれば、過抱卵になってしまう可能性が高いのです。ですから、早い時期に、多めにオスを準備し、メスの為に、十分に相性の良いパートナー探しが出来る環境を作っておいてあげなければいけないという訳です。
そして、メスにとって選ぶ対象が少なく、万が一、パートナーを見つける事が出来なかった場合、それからペットショップに走っても、なにしろ同じメダカ飼育をする人達にとっても、繁殖シーズンのその時期は同じ気持ちで、多数競合が起こる状況にあるので、入手困難な場合も無いとは言えません。ですから、早い時期に、余裕をもった数を用意する事が大切と言えるのです。
メスを多めに入れるグループ飼育することで、相性の良いペアが出来やすくなるという利点があります。もし、メスにとって魅力あるオスがいない様子であれば、思い切ってオスを取り替えてみる事も必要かも知れません。メスは、充分にオスを吟味した上で、気に入らなければ、あからさまに避けることもあるのです。
また、ポイントとしては、メスより一回りくらい大きめの体格のオスを選んでカップルにすることを心掛けてみましょう。メスの方が大きいと受精がうまくいかないという場合があるといわれているからです。
水槽内は、必要最低限、シンプルを心掛けましたか
繁殖の為の水槽内には、必要なもの以外は入れないというのが、お勧めです。できる事なら生体と産卵巣だけというシンプルな形が理想的です。
繁殖を始めるにあたって必要なものは、まずは、健康な生体(カップル成立の為の十分な数のオスとメス)、産卵水槽と孵化水槽、稚魚用のエサ、産卵巣、以上があれば、十分です。
飼育場所が、屋内の場合には、メダカの繁殖条件として必要な日照時間13時間、水温25℃の環境を整える為に、蛍光灯やヒーターを用意することも必要となる場合もあります。
水草に関しては、ホテイアオイ、アナカリスなどの採卵用の水草であれば良いのですが、ディスプレイ用の水草では、正直、意味がありません。ホテイアオイは、根の部分がなるべく茂っていて、青々とした元気なものを選べば、かなり丈夫で扱いやすい上に、メダカの採卵に適し、加えて水質の浄化性能も高い最高のアイテムと言えるでしょう。
最後に、障害物ですが、意図して卵を生み付けてしまうのか、それとも、泳いでいるうちにそれらに偶然に引っ掛かって卵が離れてしまうのか、そこは定かではありませんが、メダカが興味を持ちそうな障害物を配置する事は避けて、正確に産卵巣にだけ、狙いを定めて産卵出来る状態を作ってあげる事が、孵化率も上がり、効率的な繁殖計画とえるでしょう。
産卵水槽と孵化水槽に分けて管理しましたか
実は、メダカは自分の卵を食べてしまいます。卵のみならず生まれてきた稚魚も食べてしまうという習性があるのです。それを防ぐため卵は、親から隔離する必要があります。
産卵水槽ですが、一般に販売されている水槽の素材は様々ありますが、ガラス、プラスチック、アクリル、陶器、特にこだわらなくてもよい様です。しかし、形状や容量については、多少配慮が必要な様です。
形状としては、なるべく深くないもの、例えば深さ20cmもあれば十分です。つまり、深すぎても浅すぎても良くなく、適度な水深がよいのです。
そして容量ですが、たとえばオスメス1:1の場合、容量は7~10リットル程度が良いでしょう。少量での繁殖の場合、大きすぎる水槽の場合、オスがメスを追いかける為には大変体力を消耗する事になり、繁殖活動がうまくいきません。また、オスメス10:10の場合には、200リットル程の水槽が望ましいでしょう。
しかし、このバランスが正しくない場合、例えば水槽の容量の割にメダカの数が多すぎるなどの場合には、即水質汚染が起こり、メダカがその状態を良くない環境と判断することにより、メダカ自身が産卵しなくなってしまうという事がおこってしまうのです。
次に、孵化水槽ですが、あまりにも小さすぎると、いざ孵化した稚魚で水槽内が一杯になってしまい、結局は稚魚を移動したり、頻繁に水替えが必要になる事態は望ましくないので、入れる卵の数にあわせるのも勿論ですが、目安としては、繁殖水槽の半分程度の容量の孵化水槽を準備しましょう。
メダカは一日に多ければ20個以上を生むこともあります。孵化水槽の大きさは、卵の数を考えて最適な大きさを見極めましょう。
稚魚が成長し、水槽の広さと生体数のバランスが取れていない場合、特に、過密飼育になると病気が発生する可能性や、成長しにくくなることがあります。
逆に言えば、適切な棲息密度でまだかにとって最適な環境による飼育ができていれば、稚魚はぐんぐん成長し、孵化後40日で産卵可能な大きさまで成長するという事になる訳です。
健康な生体を選びましたか
これは、最も重要なポイントです。当然ですが、メダカは健康体でないと卵を生む事はできません。そして、健康なメダカに、良好な環境を整えてあげる事も大切です。
ペットショップでメダカを選ぶ際に、卵をお腹に抱えた生体を見つける事があるかも知れません。それは実にラッキーです。そのペットショップは、良い生体を抱えており、また、メダカにとって正しい管理と飼育環境を整えているという証拠なのです。
しかし、ここで注意しなければいけないことがあります。それは、メダカは初めての産卵後、約二ヶ月ほどで産卵がストップしてしまいますので、購入前にあまり産卵を重ね過ぎてしまった生体は避けた方がよいかも知れません。
しかし、見ただけで判断するのは困難ですので、良心的で信頼出来るペットショップであれば、その点も相談した上で購入しましょう。
やせたメスは、卵にエネルギーをまわす余裕がない事が多いものです。栄養面に充分配慮された良いエサを食べさせ、体力をつけ、おなかがふっくらしてきた時が産卵の狙い時といえるでしょう。
水温、日照時間は適切ですか
孵化水槽の水温は、産卵水槽と同じ位か、又は、1、2℃高めの設定にしましょう。孵化に適した水温は24、5℃位と言われています。20℃では、やや低めで孵化は難しい様です。
せっかく卵の中の稚魚が確認出来たのに、無事生まれてこなかったという場合には、水温が低かったという理由が考えられます。
基本の水温を保っていられたか、一日のうちでその水温を下まわった時間帯がなかったか、ヒーターは入れていたが水温ムラがなかったか。このあたりをしっかり確認してみて下さい。
そして、メダカを飼育するにあたっては日照時間13時間を確保しましょう。稚魚を育てる際にも光量はきちんと確保する事が大切です。光をあてて健康なメダカに育ててあげましょう。
明るい時間は、12~13時間に設定し、それ以外は暗い状態を保つ事が大切です。夜間は水槽にタオルなどをかけ、周囲の人工的な光を遮る工夫が必要です。
実は、メダカは朝の訪れを感じて、早朝に産卵行動を行うという習性があるのです。ですから、人間の生活感の強い環境では、夜間の室内照明が影響し、本来のメダカ体内時計の感覚がずれ、産卵しにくくなる心配があるのです。夜間は水槽にタオルをかけるなどして、周囲の光を遮るようにしましょう。
また、余談になりますが、種類によっては神経質なメダカもいますので、照明と同時に、騒音的にも注意が必要です。繁殖期には、特に夜半から明け方の騒音は、なるべく控えるべきでしょう。
水質に問題はないですか
孵化して、すぐに死んでしまうという場合には水質の悪化が考えられます。メダカも人も同じですが、孵化後まもなくは、まだ免疫もできていないので弱い物です。ですから、水質には十分配慮が必要だという事になります。
飼育水と水道水の二者択一であれば、是非、カルキを抜いた水道水を選ぶ事をお勧めします。意外な事かも知れませんが、実は、このポイントで失敗してしまう事も多いのが現状の様です。
水質悪化の中でも、水カビ菌が繁殖するのを防ぐというのは、特に大切なことです。メチレンブルーで消毒するなどの方法もありますので、お試しください。
稚魚用のエサは、適当ですか
エサ選びも難しいものです。エサを間違えると、せっかくの繁殖シーズンを棒に振ってしまったなどという話もよく耳にします。
メダカは、孵化して数日はエサを食べる事はできませんが成長するにつれて、ごく小さな粒子のものなら口にすることが可能になりますので、パウダー状にしたエサを与えるようにしましょう。孵化後すぐの稚魚には、メダカのエサとして一般的なブラインシュリンプ・赤虫・糸ミミズなどの生餌を与えても大きすぎて口に入らないので、適してはいません。
この時期、充分な栄養が摂れなければ、メダカは成長できませんし、生命を維持する事も難しく、残念ですが死んでしまうのです。ですから、この時期のエサ選びやエサの与え方は、とても重要なのです。
そして、また、そのエサがメダカの稚魚が好む、ゾウリムシなどの微生物を水槽内に発生させるという状態を作ってくれる事により、メダカにとって、とても優れた環境になるという事なのです。与えたエサを上手に食べられない生体、吸収出来ない生体も、これのお陰で育つ事が出来るとも考えられます。
稚魚が5mm程度にまでに成長すれば、ほぼ安心です。更に、1cm前後になると生餌を与える事も可能です。因みに、エサやりは、一日か二日おきが良いでしょう。
産卵巣に問題はないですか
産卵巣にも様々な種類があります。メダカ自身、タイミングが合わなかったり、相性がよくないと感じた場合、産卵巣に卵を生み付けない時もあります。
せっかく繁殖が成功したのに、その大切な卵をうみつける事が出来ないなんていう様な事が起こらない為に、産卵巣は数種類準備をし、ローテーションさせるのも良いかもしれません。
また、産卵巣に産みつけようとした卵が、上手く絡まず、底に落ちてしまう事もあります。その様な卵を逃さないために、水槽の底には、ガーゼや綿やシュロ皮などを敷いておくと良いでしょう。
誕生した稚魚の個体差に配慮出来ていますか
繁殖が成功し、めでたく誕生した稚魚達ですが、同時期に孵化し、誕生した個体同士でも二週間もすると成長に差は出て来るものです。
水槽内は、自然界と一緒で、強い物が生き残るという、厳しい生存競争が起こる様で、成長に差がある生体を同じ水槽内に入れておくと、エサの取り合いに負けたりいじめられたりと、強いストレスを受ける場合も少なくありません。その為、更に、なかなか大きくなれないという事にもなりかねないのです。
ですから、その様な場合には、水槽を分けるなどの配慮が必要になってきますので、水槽内の様子は、小まめにチェックし、しっかり観察して下さい。
いかがですか。以上の様な事に注意して飼育を続けて行くと、だんだんと繁殖の気配が漂ってくるものです。早朝、オスがメスの周りをぐるぐる回る、いわゆる繁殖ダンスが見られ、やる気満々な様子が見て取れます。
繁殖シーズンが近づくと、オスはメスを追いかけるようになり、メスも最初逃げはしますが、だんだん慣れて抱卵するようになってくるのです。その卵も、初めのうちは、無精卵が多いのですが、徐々に受精卵ばかりになり、その時に寄り添っているカップルがベストカップル。やっと繁殖のセッティング準備完了となる訳です。
また、確実に繁殖させたい場合、メスのメダカのお腹に付いた卵を、直接採取して孵化させるという方法もありますので、お試しください。
まとめ
メダカの繁殖が上手くいかない人の7つの盲点
・繁殖シーズン前に、オスとメスのバランスを考えた数を確保しましたか
・水槽内は、必要最低限、シンプルを心掛けましたか
・産卵水槽と孵化水槽に分けて管理しましたか
・健康な生体を選びましたか
・水温、日照時間は適切ですかは適切ですか
・水質に問題はないですか
・誕生した稚魚の個体差に配慮出来ていますか