歳を重ねた猫の死因の中でも特に多いとされている、猫の腎不全。この病気になってしまったら、もうどうすることもできないのでしょうか。飼い主は、ただ、黙って猫の命が終わるのを見守ることしかできないと思っている人も、少なくないと思います。ですが、諦めるのはまだ早いです。腎不全というと、手の施しようのない病気という印象がありますが、対処次第で、少しでも長く元気に生きてもらうことが可能です。
確かに、腎不全は完治することは無い重い病気です。しかし、猫が元気な状態を保つために、飼い主にできることはいくつもあります。今まで大切にお世話してきた猫が相手なら、何でもいいからしてやりたいものですよね。今回は、そんな腎不全への対処法をお伝えします。
猫が腎不全になったときに
対処できる事とは
慢性腎不全と急性腎不全
猫が生きる上で、腎臓は大変重要な役割を持つ臓器です。一説によると、猫は、少ない水分でも生きられるように、摂った水分を効率よく使うために、腎臓を酷使する必要があるからと考えられています。そのため壊れやすく、壊れたら壊れたで、生命維持に大きな問題が生じてしまうのです。猫がかかる腎疾患には多種類ありますが、特に多いのが、腎不全。腎不全には急性腎不全と慢性腎不全があり、猫に多いのは、慢性腎不全の方です。特に、6歳以上の猫は、発症率がぐっと上がります。
慢性腎不全の症状は、まず見られるのが多飲多尿。つまり、水をたくさん飲むようになり、おしっこの量も大幅に増えることです。腎臓の機能の中に、血液中の毒素を漉し取り、きれいになった水分を再び吸収して、血液中に戻すという働きがあります。慢性腎不全だと、この再吸収の働きがうまく行かなくなります。そのせいでおしっこが大量に出て、体内は水分不足になるために、水を欲しがるようになるのです。
急性腎不全は、猫がかかる割合としては小さいですが、全くないわけではありません。この場合は、慢性腎不全とは逆に、おしっこの量が極端に少なくなります。そして、早期発見して治療をすれば、慢性腎不全とは違い、完治も見込める病気です。ここでは、この急性腎不全ではなく、完治の見込みのない慢性腎不全の猫に対するケアを中心に、ご説明します。
慢性腎不全の治療
慢性腎不全を発症すると、残念ながら、完治する見込みは無いとされています。そのため、発症後にできる治療といえば、これ以上腎機能が低下しないようにすることだけです。発症初期から中期のうちは、点滴などで体内のミネラルバランスを整え、血圧を下げる薬や胃潰瘍を抑える薬の投与を行います。そして、体内に溜まった尿毒を吸着して排出する飲み薬も服用させます。また、腎臓は、ホルモンを作り出す役割も担っているため、腎不全で作れなくなったホルモンを注射などで補います。
中期までの腎不全なら、上記の治療と食事療法で腎機能の低下を食い止められますが、末期の場合はそうは行きません。末期腎不全では、血液中に、尿として出されるはずだった老廃物が蓄積し、尿毒症を引き起こします。そのため、中期までの治療に加えて、人工透析が行われることがあります。これは、壊れてしまった腎臓の代わりに、人工的に血液を浄化するために行う手段です。しかし、猫への負担が大きい処置でもあるので、必ず行うとは限りません。
猫の腎移植も、人間のように行えないことはないですが、やはり猫の負担の大きさと、金銭面や技術面、そして様々な条件などが適合しないと難しく、現実的な方法とは言えません。
慢性腎不全の食事と看護
治療のことは、全般的に獣医さんにお任せすることになりますが、飼い主側ができることといえば、やはり食事です。猫の腎不全の進行を食い止めるためには、何よりも食事療法が大切と言われています。今では、キャットフードメーカーから、腎臓病用のフードが発売されていますが、猫の性格によっては、自分の好みのフードにしか手を付けない場合も考えられます。もし、どのメーカーの腎臓病用フードにも手を付けないのなら、獣医さんに相談しながら、低たんぱく、低ナトリウムにした手作りの食事を与える方法もあります。ですが、手作りする場合は、素人判断では、却って病状の悪化を招くことがありますので、必ず、専門家に相談してから行って下さい。
また、猫を普段どのように生活させるかでも、予後が変わってきます。まず、ストレスは厳禁ですから、猫が落ち着いて、リラックスできる環境を整えてあげましょう。そして、睡眠を十分にとらせ、体力的に無理をさせないようにします。そして、いつでも新鮮なお水を、飲みたいだけ飲ませてあげて下さい。このように、猫にとって快適な環境を整えてあげることで、慢性腎不全発症後も、長く生きる可能性が高くなっていきます。
いかがでしたか。猫の腎不全、その中でも特に多いとされている、慢性腎不全の治療と自宅での看護についてご説明しました。もう完治しないと言われると、大きなショックを受けることでしょう。しかし、気持ちを切り替えて、なるべく元気で過ごしてもらえるように環境を整えるのも、飼い主の大事な務めです。猫の余生をより充実させるために、できることをしてあげましょう。
また、猫の腎不全は、発症してしまうと完治の見込みがない病気ですが、猫が幼いころから生活習慣に気を付けてあげることで、予防が可能な病気です。人間の食べ物を与えたり、欲しがるからとおやつを頻繁に与えていては、腎臓を始め、身体を壊す原因になります。ですから、猫と少しでも長く一緒にいたいのなら、病気になる前から、食事などに気を付けてあげましょう。
まとめ
猫が腎不全になったときに対処できる事とは・腎不全には、慢性腎不全と急性腎不全がある
・慢性腎不全の治療は、輸液、投薬、人工透析などがある
・慢性腎不全の食事に気を付け、ストレスのない看護をしてあげよう