大切なペットを失い心にぽっかり穴が開いた様になって、様々な精神的・身体的変化や症状を訴える人は多い物です。ペットへの深い愛着や愛情が、突然訪れたペットの「死」や行方不明などにより、行き場を失う事でおこる現象だと言われています。
ペットロス症候群が引き起こす代表的な疾患としては、うつ病・不眠・拒食症・過食症などの摂食障害・いわゆる心身症と言われる胃潰瘍など消化器疾患・情緒不安定、疲労や虚脱感・無気力、めまいなどの症状・ペットに関わる錯覚、幻視・幻聴などの幻覚や妄想など、いわゆる精神病様症状などの『精神疾患』があげられます。
ですから、もし、身近に大切なペットをなくし悲しんでいる人がいたら、どうか、「たかがペットの死」などと侮らないで一緒に悲しみを乗り越えてあげて下さい。
そして、では、何故、ペットロス症候群がこれらの病気に繋がってしまうのか、考えてみましょう。
侮らないで。
ペットロス症候群が病気に繋がる7つの理由
ペットに注いだ深い愛情や愛着が、行き場をなくしてしまうのです
世の中に目を向けてみると、少子高齢化、核家族化の現在、子育てを終えた熟年夫婦にとっては、ペットが巣立っていった我が子同然の存在になり、深い愛情を注いでいるというケースはとても多く見受けられます。
そんな大切なペットが、「死」や「行方不明」という理由で、ある日突然目の前からいなくなってしまう、つまり、大切な宝物を失うショックは、とても大きい物です。
現実を受け入れる事が出来ず、いわゆる防衛機制の一種である逃避状態に陥ってしまうと考える事ができるのです。その結果、その様な精神疾患や症状が表れてしまうのです。
この場合、飼い主がペットを伴侶動物、つまりコンパニオンアニマルとしての位置づけとして、生活を共にしているという事が大きな要因となっていると言えるでしょう。
ペットに対する非常に深い罪悪感や、罪業観を訴える、又は、ペットの死にまつわること以外にまで罪悪感を持っている様であれば、早めの対処を試みましょう。
ペットの寿命は自分よりも短い現実を受け入れましょう
家族同様大切なペットを失う事の悲しみは深い物です。ところが、どうしたってペットの寿命というものは10年程度で、飼い主さんよりは短命であるのが当然です。
ペットを飼育しているのではなく、ペットに支えて貰っている、ペットに人生の楽しみを与えて貰っている飼い主さんが増加している現在では、そんな重要な役割を持つペットとのお別れなどあって欲しくない、あるはずがないと思いたいものです。そんな気持ちが、ペットとの別れを現実として受け入れない気持ちを生み出してしまうのです。
つまり、ペット依存とも言える状況になってしまっているのかも知れません。ペットの死を受けて、健康を害してしまうほどまで悲嘆に暮れてしまう状態は、決して健全とは言えず、専門機関での診察を受け、投薬、カウンセリング等を併用した治療が必要と言えるでしょう。
とても辛い事ではありますが、ペットとの別れは現実として受け止め、看取りなど心の準備を常日頃からしておく事がペットロス症候群を重くしない為の準備的対処の一つです。
ペットが元気なうちに、老い支度・終末期ケア・火葬・埋葬など、来るべきその時のお弔い計画を立てる事により、前もって死と向き合い、別れのショックやストレスを軽減する努力が必要です。
愛するペットのため、飼い主としてできる最後の仕事が、ペットをしっかり見送る事と考えたらいいのではないでしょうか。
ペットへの過剰な依存心は禁物です
ペット中心の生活になってないか、ペットとのほどよい距離が保てているか、今一度冷静に自分を眺めてみる事です。
飼い主さんの中には、ペットを献身的に世話する事が自分の人生の目標となってしまっている場合、そのペットの死により、自分の存在意義まで見失い自己喪失に陥り、自己の同一性、つまりアイデンティティの危機にまで発展してしまう訳です。
これは、ペットへそそぐ愛情がとても深いという事と共に、ペットに対する強い依存の結果だと考えられるのです。本来、飼い主さんはオーナー(所有者・持ち主)や マスター(主人・支配者)と呼ばれる存在であり、ペットというものは、飼い主さんへの依存なしには生きて行く事は出来ないものですが、現代の日本においては、生活環境や家族形態の変化に伴い、ペットの室内飼育が常識となり、ペットが家族の一員となることにより、人間と動物の関係、飼い主さんとペットとの関係も一つの大きな共同生活者というくくりになっているのです。その為、飼い主さんがペットに過剰に依存し、精神的に独立出来ていないというケースが目立っているのでしょう。
その様な事から、日頃から飼い主さんはペットと適度な心の距離をとる事を意識してペットロスに陥らない様な自助努力が必要といえるでしょう。
長期にわたる体調不良を見逃してはいけません
例えば、ペットの死後、飼い主さんが体重の極端な減少や増加がみられた場合、ペットロス症候群が病気に発展する危険性があります。
目安として、1~2週間あるいは、3~4週間以内などの比較的短期間に3kg以上、または体重の5%以上の増減が見られる事が判断基準となるでしょう。
食欲不振や過食など食欲障害が長期間持続するのも危険です。また、胃の痛み・頭痛・胸が締めつけられるなどの感覚も見逃すことはできません。
非常に強い不安感や孤独感が引き金になります
日常的に続く不眠や睡眠過多などの睡眠障害はペットロス症候群が病気に繋がるシグナルです。
そんな中、引きこもりや自傷・他傷、自殺念慮や自殺計画、自殺企図を繰り返す事もあります。
更には、幻覚や幻視・幻聴・幻臭・幻触など、いなくなった筈のペットの姿を追い求めるかの様な現象が、ひんぱんに起こるという事例もあります。また、悲しい分かれから1カ月以上経過しても悪夢を見て苦しんだり、受け入れがたい最愛のペットの最期の姿などのフラッシュバックが継続的に起こり、ひどく落ち込んだりする事もあるようです。
この様な場合にも、重度のペットロス症候群と考えられますので、病気になる可能性は大ですので、早めの対策が必要です。
飼い主仲間を作り、気持ちの共有をする様にしましょう
ペットを介して友達をつくっておくという事は、とても有効です。例えば、近所の公園にてみる事でペットのお散歩仲間をつくるのも良いでしょう。また、ペット愛好家が集まるサークルやその他様々な場所で、お仲間が見つかるはずです。積極的に働きかけてみましょう。
その様な友人やお仲間がいれば、もし万が一、大切なペットの死にも、一番の理解者となってくれ、共に涙を流し、悲しみを分かち合ってくれる事でしょう。
そして、そんなペット友達も、必ずそんな日がやってきて、ペットロスを経験しなくてはいけなくなるでしょう。そんな時にこそ、仲間同士、悲しみを共有し、互いに支え合うことで、その死や別れを乗り越え、ペットロスの苦しみを軽減出来るのではないでしょうか。
ペットロス症候群とは、何かを正しく理解しましょう
最愛のペットを亡くしても、大半の飼い主さんは、何とか悲しみを乗り越えることができます。しかし、一部の飼い主さんは、この世の終わりともいえる程の悲嘆に打ちひしがれ、立ち直ることが出来なくなります。
ペットロス症候群の正しい知識を持つ事はとても大切です。例えば、ペットを亡くした悲しみが、ある程度時間が経っても癒えない事に、不安や焦りを感じる場合がある様ですが、悲しみの深さも、つらい時間の長さも人それぞれです。
ペットの死後3~4週間ほどたっても悲しみが癒えなかったり、かえってひどくなる場合には、カウンセリングを受ける合図かも知れません。
また、悲しみだけではなく、怒りの感情などを持つ事もある様で、そんな自らの体験を異常視してしまう飼い主さんや周囲の方もいるようですが、これらはペットロスの正しい知識を持っていないための誤解です。
また、その一方、ペットロスは病気ではないし、悲しいのも当然と放置する声があるのも現実で、そんな考えがペットロスに適正に対処するチャンスを逃し、危険な状態になってしまう場合も少なくはないのです。そして、明らかな病的ペットロスでさえ見逃されてしまう事もあります。
勿論、ペットロスに関する知識さえあれば、悲嘆がなくなるという訳ではないのですが、来るべきその時の為の心の準備が出来ていれば、必要以上の心の傷を受ける事は軽減出来るのではないでしょうか。
いかがですか。以上が侮ってはいけない、ペットロス症候群が病気に繋がる7つの理由です。ペットの死を現実として受け止める事が出来ない以上、気持ちを切り替える事など不可能です。自分の力で冷静に対処できないのであれば、そのお手伝いをして貰うものが必要です。
近年では、ペットロス専門の心療内科医やソーシャルワーカー、カウンセラーによる悲嘆カウンセリング・悲嘆療法を専門とする機関もありますので、ペットの死後、心身の不調が長引く様であれば、我慢せずに積極的にこれらを利用しペットロス症候群が病気に繋がる前に対処しましょう。
まとめ
侮らないで。ペットロス症候群が病気に繋がる7つの理由
・ペットに注いだ深い愛情や愛着が、行き場をなくしてしまうのです
・ペットの寿命は自分よりも短い現実を受け入れましょう
・ ペットへの過剰な依存心は禁物です
・長期にわたる体長不良は見逃してはいけません
・非常に強い不安感や孤独感が引き金になります
・飼い主仲間を作り、気持ちの共有をする様にしましょう
・ペットロス症候群とは、何かを正しく理解しましょう